
月は、掌に乗せると意外なほど軽い――そんな幻想を信じたくなる一枚だ。
星霧の海をゆっくり横切る銀河、その手前で、薄青の花文様の着物を纏った彼女が目を閉じる。金の縁取りが月光を受けて細く灯り、髪飾りの揺れが宇宙の微風を教えてくれる。彼女の手のひらには、環を帯びた白い月。小さな衛星たちが周りを巡り、呼吸のリズムに合わせて軌道を描く。
頬に射すやわらかな光は、祈りとも約束ともつかぬ温度を持ち、こちらの時間まで静かに減速させる。もし手の月が言葉を持つなら、「大丈夫」と囁くだろう。見上げるより、受け取ること。遠さより、近さを信じること。
このイラストは、宇宙という果てを“手の届くやさしさ”へ翻訳した。煌めきも静けさも同居する夜、私たちはただ目を閉じ、胸の奥の銀河を整える。月はここにある――あなたの掌に、そして物語のつづきは、そっと息を吸うたび始まっている。


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