高層ビルの灯りが瞬く都会の夜、屋上の一角だけが不思議な静けさに包まれています。月の三姉妹は、それぞれ柄の違う着物に身を包み、空に浮かぶ「謎の月」を探していました。

満月うさぎの黄色い着物の長女は、タブレットに映る星図と空を何度も見比べます。画面の中にだけ現れる、小さな補助線の外側の光点――それが噂の“もうひとつの月”の候補です。
真ん中の姉は、深い緑の着物にすすき模様。望遠鏡を覗き込み、レンズの向こうを真剣な眼差しで見つめます。都会の光を避けるように微妙に角度を調整しながら、時折ノートに小さなメモを書き込む姿は、小さな研究者のよう。
紅い三日月模様の着物を着た三女は、手にした白い花をくるりと回しながら、姉たちの様子をやさしく見守っています。見つからないかもしれない、でも今この時間を分かち合えることこそが、彼女にとっての「答え」のようです。
ビルの谷間に浮かぶ濃い藍色の空、風に揺れるススキ、足元の鉢植えの緑。そのすべてが三姉妹の会話と笑い声をやわらかく受け止めます。謎の月はまだ姿を見せませんが、彼女たちの胸には、今夜だけの小さな宇宙が確かに輝いている――そんな余韻を感じさせる一枚です。


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