灯りが揺れる夜店の路地。黒地に紅の牡丹が咲く着物の女性が、まるで手毬のように満月を指先ですくい上げる——。和の艶やかさと幻想性が溶け合う一枚です。

月を“触れる”モチーフ
現実では届かないはずの月を、人肌の距離感に引き寄せる演出。見る人の時間感覚をふっとほどく仕掛けです。
黒×紅×金の三重奏
黒地の着物に紅の牡丹、髪飾りの金が差し色となり、提灯の橙光と呼応。夜の深さと温度を同時に感じさせます。
穏やかな表情
目線の先は月。口角をわずかに上げた“余裕の微笑み”が、艶やかさを上品に留めています。
奥行きのある情景
背景の人だかりと町家のパースが、祭夜を思わせるにぎわいを静かに伝え、主役の存在感を引き立てます。
祭の夜、彼女は「叶えたい願いがあれば、月をひとすくい」と笑う。
指先にのった満月は、提灯と同じ明かりに見えて、どこか違う。
手のひらの光で、今宵だけの約束を結ぶ——そんな一瞬を閉じ込めた作品です。
おわりに
手の届かないものに、そっと触れられる夜。
この一枚が、あなたの“月の思い出”を照らす灯りになりますように。
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