
白い蛍光灯が並ぶ無機質な研究室。椅子に腰かけた赤い着物の女性が、にやりと笑いながら手を沈めているのは――水を張ったガラス筒。その底には、金色にゆらめく満月。
「夜を持ち歩けたら」という妄想を、実験器具のスケールで具現化した1枚です。
青白い蛍光灯の下、金模様の赤い羽織がひときわ映えます。女性の視線はまっすぐ。
「ほら、捕まえたよ」と言わんばかりの笑みが、画面の重心を手前に引き寄せます。
水槽の中では金色の月が静かに光り、細かな気泡が水面に散っていきます。
冷たい室内色(ブルー)と、暖色の主役(レッド/ゴールド)の対比が物語を濃くし、
“科学の部屋に迷い込んだ神話”というテーマをわかりやすく伝えます。
イラストの見どころ
- 主役の存在感:深紅の羽織に金の唐草模様。自信と茶目っ気が同居する表情が、画面の重心をぐっと手前に引き寄せます。
- 異化された舞台:ステンレスとスカイブルーで統一された“研究室”。和装とのミスマッチが、物語のスイッチを入れる仕掛けに。
- 水槽の満月:水の粒子が月光を砕くようにきらめき、現実味のない“手触り”を与えます。月面のディテールまで感じられる描写が心地よい。
- 視線設計:V字に落ちる構図→水槽→月へと誘導するラインが明快。人物の前傾姿勢と笑みが「捕まえたよ」と語りかけます。
ストーリーの想像
彼女は都市伝説の研究者。夜ごと屋上に現れる月の欠片を採集し、光の性質を調べている——そんなバックストーリーが似合います。
今日のサンプルは“満月”。手なずけたように両手で包み、水温と光度を測りながら微笑む姿は、科学と魔法の交差点に立つ“現代の陰陽師”のよう。
コメント